『十三機兵防衛圏』レビュー このゲームを、プレイしてほしい

 

十三機兵防衛圏 - PS4

十三機兵防衛圏 - PS4

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: アトラス
  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: Video Game
 

 クリアしたので感想を書きたいと思います。人に薦めたいのでネタバレは無しです。このゲームはストーリーに付いて触れられず布教しづらいので、最初に書いとくけど、総クリアまでの総プレイ時間は40時間前後。そんな100時間とかかかるようなのじゃないよ、手軽な方だよ!

 

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発売して2か月経過しましたが、ロボット物のゲームという事で気にはなってたんですが、Gジェネクロスレイズと発売かぶっていたのでそっちを優先。その後、やたら評判が良いというのを頻繁に目にし、12月中旬あたり正月休みにやってみるかと購入したはいいものの、正月休みをガンプラ消化に明け暮れてプレイできず、未開封状態が続きました。暇というほど時間に余裕もなく、そこそこのボリュームのAVGとなると、なかなか踏ん切りが付かないものです。

 

 

news.denfaminicogamer.jp明けて3連休の11日にこの記事の、「フルボイス系ゲームにありがちなテンポの悪さがない、サクサク進む」という文章にしごく納得する部分を感じ。プレイする決心を固める。そしてプレイしてものの1時間で、圧倒的な描き込みの2Dグラフィックと、ストーリーテリングの巧みさでドハマリした。スゲェよこのゲーム。なんであんなにプレイするの躊躇ってたんだろう。

 

 

 

▼ストーリー構成がスゲェ

基本ストーリーは、13人の少年少女が「機兵」と呼ばれるロボットに乗って怪獣と戦う、以上(これしか説明できない)

ゲームとしては13人のストーリーがそれそれ展開する「追想編」と、機兵に乗って戦うリアルタイムステトラジー方式の「崩壊編」、設定を説明する「究明編」の3パートで構成されてるんだけど、比率的にAVGパートが全体の半分以上を占めるのでほぼAVGと言っても差し支え無い。

ストーリーは、10分~15分ほどのショートエピソードの集合体で、さらにプレイヤー自身がキャラクターを自由に選択できるので、決まったストーリー進行というものが無い。さらにほとんどが回想シーンで構成されており、これは例としてはゼルダBOWのストーリーをもの凄い壮大なボリュームでやってると言ったら分り易いかなぁ。

描かれるエピソードは時系列もバラバラで、内容によっては人間関係がまるで異なっているものもあれば、世界観すら違うものまである。プレイヤーはこれを「なにか仕掛けがある」と思いながら進めるわけだけど、全体進行率が%で表示されるので、序盤なら序盤なりの、中盤ならそれに見合った展開が来るのかと思いきや、「この段階でその情報出していいの!?」というような、衝撃の事実や前程がひっくり返るような事が頻繁に起こる。新たな情報が出るたびに登場人物のプロフィールが更新されていくので、プレイしながら考察ができる。この「情報開示」の匙加減が絶妙に巧い。

これらのストーリーの進行管理を神谷盛治というクリエイターがほぼ一人でやってたんだから、このゲームを評価する際に「狂気」と称されるのも解る。ほんとこんな複雑怪奇極まりないストーリーのスクリプト作るなんて、そうそうできる芸当じゃない。

あと数々のSF作品オマージュや1980年代ネタが非常に豊富なのも良いです。元ネタと思われる作品を言ったらネタバレになるので控えるけど、アレかなコレかなと思いながらプレイするのは楽しい。

 

 

 

▼グラフィックがスゲェ、キャラもスゲェ

ゲームをある程度かじってる人間なら、プレイして即、このゲームの2Dグラフィックのモーションの描き込みの異常さがよく分ると思います。プレイヤーは横スクロールでキャラを操作するんだけど、歩く、考え事をする、考え事をしながら歩く、などのキャラの仕草や動きがものすごく自然。これを全部ドット打ち込みの手作業でやったのかと思うと気が遠くなる。

そして女性キャラの細かい仕草とかいちいち性癖に刺さる。メイン女性キャラが6人いるけど、大衆受けというよりは「俺はこういう娘が好きなんだ!」 という製作者の強い情念を感じた。テンプレじゃないだけに2~3人は確実に刺さると思います。ええ、僕は薬師寺さんと東雲先輩が刺さりましたよ、ええ。沢渡さんもいいと思うんだ。

もちろん男性キャラも外面だけじゃない、内面的なイケメンが揃っているので女性人気も出るでしょう。

 

 

 

▼UIがスゲェ

本作がなかなかプレイにふん切れなかった理由のひとつに「豪華声優陣によるフルボイス」というのがありましてね。なんていうかほら、フルボイスのゲームってテンポ悪いじゃないですか・・・。会話ウィンドウのセリフ読んで、音声が終わるまで待つ、あの「間」がですね・・・・音声カットするのも声優さんに申し訳ないし。フルボイスにあまり必要性を感じないんですよ。

だがこのゲームはそもそも会話ウィンドウが存在しない。音声と同時にキャラの頭上に文字が表示される。長文はなく短文が連続表示されるので音声終了待ちも起こらない。会話進行はデフォルトではボタン操作ではなくオートなんだけど、このオート時間の「間」の調整も絶妙。まったくテンポの悪さを感じなかった。

あと声に関して言うと、種崎敦美さんの演技の上手さが凄すぎて尋常じゃなかった。プレイすればわかる。

 

 

戦闘パートである崩壊編に関しては、モードとしては独立しており、いわゆる「ストーリーパート→戦闘パート→ストーリーパート」というような進行ではない。追想編をある程度進めると進行にロックをかかり、崩壊編をクリアすればロック解除されるという。これによって「ストーリーの合間に入る戦闘」という煩わしさが生じない。戦闘はリアルタイム方式だけど、ゲームに慣れてなくてもクリアできるくらいの難易度。ミッションやSランク報酬などがあるけど、コツを掴めば難しくなく取れるレベル。

そしてこの戦闘パートの画面がめっちゃシンプル。自機も敵も簡単な記号でしか表示されない。武装の戦闘アニメはあるにはあるけど、編成画面でサムネイルで表示されるだけで実際の戦闘パートではエフェクトが出るのみで戦闘アニメ自体は表示されない。確かに長ったらしいムービーとか、同じ戦闘アニメを何度も見たりするのもテンポが悪くなるだろうし、ストーリー進行としての戦闘シーンはあるけど、ゲーム進行の邪魔にはならない。この割り切り方が凄い。

戦闘シーン必要か? って論じられるレベルのシンプルさなんだけど、敵の大群をミサイルやビームで一掃する爽快感があるのでこれはこれで楽しいし、なにより少年少女がロボ乗って戦っているという雰囲気はちゃんと出ている。戦闘シーンまでAVGのテキストとして表現するとなると、やはりテンポが悪くなると思うので、シンプルでも戦闘部分をSLGとして描写したのは正解だと思う。

ストーリーとグラフィックの評価が特に高いけど、UIがモチベを維持できるテンポの良さも特筆すべき部分です。

 

 

AVGというジャンルのゲームとしては、街、逆転裁判、428、シュタインズ・ゲートと同じくらいの衝撃だった。実感としてこのようなゲームをプレイする機会は今度たぶん無いかもしれない。そのくらいの手間と才能と狂気の詰まったゲームです。

口コミでジワ売れして現在品薄で10万本突破など、今年どんどん知名度が上がっていく作品になるでしょう。というかブレイクして欲しい。ロボ界隈では十三機兵の話をすれば会話が成立するくらいにはなって欲しいです。