『殻ノ少女』クリアレビュー

昨日、更新サボったのはコレが佳境でずっとやってたからです。
今日び珍しくなった、エロゲでガチなミステリーAVGをリリースしているInnocent Grey最新作。カルタグラから好きだったので発売日買いしてトゥルーEND達成。あとはバッドエンドとかCG回収とイベント回収が残ってるけど、とりあえず感想書いときます。多少ネタバレあるんでプレイ中の人は読まないようにしといて下さい。


普通にプレイするとストーリー途中でオチがついて終了してしまうので、ハッピーエンドは無いのではと思われてるんだけど、ちゃんとあります。一定のフラグを立てればさらにストーリーが進行してそこからまた二転三転。ハッピーと感じるかどうかは人によりますが。攻略サイトに頼りたくなかったので自力で頑張ったけど、あんまりにも条件が厳し過ぎる。トゥルーに行けたのは偶然のようなもの。
魍魎の匣』アニメ化決定で、なんかタイムリーになってしまったけど、【原作】と付けていいくらい登場人物の設定が同じ。朽木冬子=柚木加奈子。水原透子=楠本頼子。他にも木場っぽいのとか鳥口っぽいのとか、似た感じのキャラが多数登場。ネタバレに関わるので詳しくは書けませんがプロットからしてそのまんま使ってる部分もあります。他にも昭和初期、終戦直後、バラバラ殺人、近●相●、無精子症、死蝋、黒い聖母、「探偵」と書いてある三角錐、などなど、ぜったい確信犯でやってるとしか思えないキーワードが盛り沢山。作品全体を表す“殻”は“匣”に置き換えられるし。
ストーリー部分は、まんま『魍魎の匣』な部分もありますが、後半から終盤にかけての複線回収が見事。前述の通り、普通にプレイすると複線未回収のままノーマルエンドになるんだけど、それ以降の展開が今までの謎と複線に総て回答が出て、どんでん返しもあり、無駄なキャラや設定が一切無し。かなり綺麗にまとまって終了します。
ゲームとしてはただのビジュアルノベルではなく、「手帳システム」というものがあり、登場人物、証拠品のデータを見ながら頭を使って推理する場面もあり。まぁ簡単に言うと『逆転●判』風ですな。また、キャラクター相関図が随時表示されストーリー展開に応じて更新されていくのでそれをチェックしながら勧めるのが楽しい。
そもそもInnocent Greyの作品は京極堂シリーズのオマージュ的な部分がもともとあったのだけど、今回はホントにド直球にそのまんま。こういう事をすると、やれパクリだトレースだと騒ぎ立てるのが今の世の中なんですが、ここまでやってくれるといっそ清清しい。自分はぜんぜん楽しくプレイできました。だって京極堂シリーズみたいなAVGやりてぇなぁ」ってずっと思ってたもの。そういう意味では18禁という年齢制限のついた表現はまさに適任。グラフィック、演出、BGM、ゲーム性、リスペクト精神、どれを取っても物凄いクオリティが高い上に、京極堂シリーズの物悲しく、うら寂しい独自の雰囲気、そして最後には“憑き物”が落ちたような気分になる部分まで見事に再現されているので、京極シリーズ信者の自分としては「よくやった」と思いこそすれ、ケチを付ける気にはならないっすな。というか映画版より50倍は面白いよ。とうぜん京極堂シリーズ未読でも楽しめます。今日びのエロゲ業界では、見た目も内容もキャッチーに成らざるを得ない部分があるんだけど、ここまでコンセプトにブレがない作品もそうないかと。
ただ、グロ描写がかなりキツイです。ストーリーも残酷極まりない。お気に入りのヒロインとハッピーエンドとかそういうの期待すると壮絶にヘコむ事になると思うので、鬱展開をシナリオライターの所為にしない人にお薦めしときます。18禁であることを最大限に活かして表現を突き詰めた良質ミステリィ作品。